物であふれた家で暮らしている老親は、汚 れて散らかった生活が好きなのかなと思って


しまいがちですが、決してそんなことはないと思わせてくれる映画のシーンがあります。


「サンダカン八番娼館」




栗原小巻さん演じる、日本女性の近代史の研究者が、天草で偶然、田中絹代さん演じる


おサキさんという老婆と知り合う。


差別と極貧の中で暮らす彼女が、ボルネオに出稼ぎしていた元「からゆきさん」であることが


分かり、おサキさんの家に泊めてもらい、その半生を聞き、書き取るというもの。


貧しさゆえ親にボルネオに娼婦として売られる、


また戦後戻ってきても差別と偏見の中で生きるというとても辛いお話。


物語の終盤、栗原小巻さん演じる研究者が泊めてもらったお礼にと


おサキさんの家の畳を張り替えたり、障子を張り替えたりしてとても綺麗にしてあげます。


新しくなった畳の上でおサキさんが、ぴょんぴょん飛び跳ねて、


「ワシの家じゃ、ワシの家じゃ、ワシの家がこんなに綺麗になった。」


みたいなことを言うシーンをなぜか覚えています。


何十年も前にテレビで一度見た映画なので、あらすじはネットで確認したけど、


セリフはこんな感じだったという記憶頼りですが。


映画を見たとき、「年をとっていても綺麗な家を喜ぶんだ」と思ったのでした。


年をとるということは、全てを達観できると思っていたのでしょうね。


でも極貧という自分ではもうどうにもできない状況を受け入れていたわけではないだ。


「人は誰しも年に関係なく、綺麗で清潔な空間を心地良いと思うもの。」という


真理を得た映画です。


本来は社会派の映画なので、こんな感想は変ではあるけど、


不思議と掃除とか、片付けとかが、記憶に残る映画って多いのよね。


掃除、片付け、逆に散らかり具合いなど、部屋や家のあり方が人を表すからなのでしょうね。